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情報サービス産業の今を俯瞰する(その6)

情報サービス産業の今を俯瞰する(その6)


しばらくはこのテーマでシリーズものをエントリをします。
また少しシリーズものをエントリします。

内容としては、情報サービス産業の現状を理解し、また中小派遣型受託開発ソフトハウスの課題や解決策を探るべく、ちょろちょろと以前に書いていたメルマガがベースになっています。

特定の企業だけでなく多くの中小派遣型受託開発ソフトハウスに当てはまる内容かと思っています。
ぜひご批評を頂ければと。
それではどうぞ。



現状の情報サービス産業についての情報展開のVol.6です。


自分たちの置かれている産業の実態、変わりつつある時流を感じてもらえればと思います。



●問題を我々の課題へ(その3)



1.前回までの振り返り


前回までは、多重下請構造と、業界慣行によって起きる問題を1つ1つ掘り下げ、対策の方向性を考えてきました。
 
今回も残りの問題について同じように考えていきましょう。


2.問題のリスト


これまでに我々が認識した問題のリストです。
 
NO問題の内容原因分類
下流工程担当による価格競争の激化下請財務面
リスクが高く成長の天井のあるビジネスモデル業界慣行
生産性向上が売上増加に直結しない業界慣行
人材育成・スキル向上の取組みの遅れ下請、業界慣行人材面
優秀な人材を誘因する魅力ある職場ではない下請、業界慣行
組織としての自律性・独立性の不足下請、業界慣行組織面

 

 前回までは(1)~(3)の問題を掘り下げてきました。
 今回は残りの問題全部を見て行きます。
 
 
 
 
 

3.問題の掘り下げと、経営課題の抽出

 

(4)人材育成・スキル向上取組の遅れ



●問題の原因を探る 

人材育成・スキル向上の取組の遅れは、下請構造と業界慣行の2つに影響されていました。
 
まずは下請構造によって、下流工程の担当が多くなると、今すぐ必要とされるプログラミング能力だけは必須ですが、その他の設計スキルや、システム全体の構築スキル、品質管理に関するスキル、要件定義のスキル、マネジメントに関するスキル、財務・会計や経営、マーケティングといったビジネススキルの必要性を感じることは少ないと思います。
 
 
また、一般にスキルというと「プログラム能力」だけを示すようにとらえられることが多いです。昔はそれが正解だったかもしれませんが、現在はもうすこし事情は複雑です。
 
現在のエンジニアには、幅広いスキルが必要とされています。これは、ITシステム開発と一口に言っても、ネットワークやデータベース、インフラやセキュリティなど、幅広い技術が求められてくるようになったり、マネジメントやコンサルティング、セールスといった縦方向のスキルも求められたりしているためです。
 
自分たちが身につけるべきスキルの全体像には何があるのかがわからないのなら、ITスキル標準をしっかり参照してみましょう。
 

ITスキル標準v3
 (IPAのサイトへリンクしています)


 
 
技術には幅と高さがありますから、自分が将来なりたいキャリアを想定して、必要なスキルや知識を計画的に吸収することが大切になってきます。
 
 
 
このように下請を行っていると、仕事で直接必要とされるスキルの向上はできますが、資格の取得や新しい開発手法の研究による生産性の向上の必要性を感じにくくなると思います。また業界慣行からの影響も受けています。人材育成やスキル向上をしなくても、人月単価契約のもとで要員を派遣すれば、よっぽどひどいパフォーマンスでなければ定額を確保できます。
 
客先でも派遣要員の技術力が低いことを分かっていて、派遣された技術者にレビューなどを通じて細かい技術指導をします。しかし本来、請負契約であれば、技術指導は社内で完結させ、客先からの技術指導を常に受けている状態は「違法状態」です。また、日々の作業内容を指示されてその通りに動くことも「違法状態」です。
 
この業界は名目と実態が即していないことが多いので、そこを理想に近づけるだけでも、かなりの経営革新になるのではないかと思っています。

本来の請負に準拠できれば、委託側も受託側も、両方とも生産性の高い開発ができるように思います。
 
 
このように、より高度な技術スキルを磨かなくてもいい状況に長い期間浸ってしまえば、当然の結果として、スキル向上が必要なことだとは誰も思わなくなってしまいます。またスキル向上をしても売上増加につながらず、評価されないとなれば、誰もスキル向上が大切だとは思わなくなります。これは特別なことではなく、誰にでも当てはまることだと思います。 
 
 
この問題の原因は2つあります。
 
 1つは、
 
  「下請で言われたことをやるだけならばスキル向上の必要性がない」  
 
ことです。
 
 
 
 もう1つは、
 
  「スキル向上や生産性向上が売上の増加につながらない」
  
  そのために、
  
  「スキル向上が組織として推進されていない」
 
 ことに起因しています。
 
 
 
 
●導き出した経営課題
 
この原因は、問題(1)(2)(3)の原因とも密接に関連しています。


原因の1つである「下請で言われたことをやるだけならばスキル向上の必要性がない」に対しては、「もっとスキルが必要とされる仕事を行う」ことが解決策の1つです。
 
これは、問題(1)の経営課題である「高付加価値のプロダクト、サービスを提供する」や、問題(2)(3)の経営課題である、「労働集約から知識集約への転換」を行う過程で、必ず新たな技術やスキルを身につける必要性が生じます。
 
知識集約を行ってプロダクトを開発したり、特定の業務領域に強みを持って上流工程を担当できるようになったりすれば、おのずとスキル向上のニーズが出てきます。
 
また、スキル向上がそのまま自分の評価に直結する仕組みが作られれば、原因の2つ目である「スキル向上が組織として推進されていない」といった組織文化も改善するので、技術者一人ひとりが、スキル向上の必要性について自然に認識することができるようになります。
 
 
結局は、下請や人月単価によって「スキル向上が売上増加に直結しないので優先順位が低くなっている」ことが原因だったので、この問題に対する経営課題は、
 

 ・高付加価値のプロダクト、サービスを提供する

  ⇒自社で提供するプロダクト、サービスを、「強み」をベースに差別
   化・高度化することで、高付加価値化する




 ・労働集約から知識集約への転換

  ⇒時間の切り売りをするのではなく、成果物やパフォーマンスベース
   での対価をもらえるようにする。また、生産性向上が売上増加につ
   ながる仕組みを構築する。




 となります。これは、問題(1)~(3)と同じことですね。
 
 
高付加価値化を目指すことで、より高度な業務を担当していけばスキル向上のニーズが生まれます。また、知識集約型の組織にすることでスキル向上・生産性向上が売上増加に直結すれば、組織としてもスキル向上を推奨し、また評価するようになります。
 
そうなれば、技術者本来の仕事である「スキル向上」に対して、みんなが自ずと取り組む組織ができると考えます。
 
 
 
 

(5)優秀な人材を誘引する魅力ある職場ではない

 

●問題の原因と、経営課題

これも根っこは問題(1)~(3)と同じといえます。
 
なぜなら下請だけを行う事は魅力のある仕事機会を提供できているとはいえませんし、人月単価で労働力供給事業ばかりやっていては、労働集約的な仕事であるため、独自の技術スキルを蓄積することも難しいからです。
 
 
近年はエンプロイメンタビリティという考え方で組織の魅力度を表現します。エンプロイメンタビリティとは、魅力的な職場提供能力のことです。働く機会を提供するにしても、この組織に所属することでどんな経験を積めるのか、どんな技術を学べるのか、といったところがしっかりしている会社のほうが、魅力度があるという考え方です。
 
組織から見たメンバ評価は、エンプロイアビリティという概念でとらえることもあります。エンプロイアビリティは他社でもやっていける能力のことで、エンプロイアビリティが高いほど従業員の組織に対する貢献も大きいです。
 
エンプロイメンタビリティとエンプロイアビリティは、組織と従業員が相互に期待する概念でですが、これは誰しもが組織と従業員に求めるものであり、専門用語で説明しなくても理解はできるかと思います。
 
 
 
一般的に受託・派遣型のソフトハウス全般に言えることですが、どうしても客先へ常駐させるビジネスのため、技術力の向上や組織的な活動がおろそかになります。スキル向上などの人材育成に、組織として責任を持つことが少なくなっています。
 
技術者からしてもそうした状況は組織のエンプロイメンタビリティが低いように見えますし、組織からしてもスキル向上がなされない技術者はエンプロイアビリティが低いように見えます。いわば、お互いがお互いの期待を下回っているような状況です。
 
 
 
この問題への対策も、高付加価値化への取組み、知識集約への取組みを通じて改善が可能です。よって、問題(4)と同じ経営課題になることがわかります。
 
上流工程などの扱うスキルの幅が広くなり、そのスキルやノウハウ、教育カリキュラムがきちんと知識集約して整備・蓄積されていれば、従業員や、求職者から見ても幅広いスキルを体系的なカリキュラムによって身につけられる、ということになります。また組織独自のノウハウがあれば、それも魅力的に写るでしょう。
 
 
 
 

(6)組織としての自律性・独立性の不足


 
●問題の原因と、経営課題
 
ここまで見てくれば、組織に自律性や独立性(独自性や強み)がない理由は自明かと思います。
 
下請構造や業界慣行に従い続けた結果、俗に言うお上意識が植え付けられてしまい、自分たちで問題を解決できるという意志や行動が欠如してしまったことが原因ではないでしょうか。他社に依存している状況では、独自の強みや競争優位を発揮することは難しいです。ここは意識改革も必要になると思います。
 
 
結局はこの問題への対策としても、高付加価値化への取組み、知識集約への取組みが有効になります。
 
まずはそうした議論をする土壌を作ることが、課題解決への1歩であるかと思います。
 
 
 
 

●次回予告


次回は、今回までに見てきた経営課題について一旦整理して考えます。



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プロフィール

so-tan

Author:so-tan
佐藤 創。仙台のIT業界でシステム開発に従事しながら、情報処理試験プロマネの受験対策を実施(「このブログについて」参照)。情報処理技術者システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、中小企業診断士。日々自分のキャリアや様々な問題に悩みつつも、前向きに問題に立ち向かえる自分でありたいと願う。そんな日々の記録です。
Twitter → @sato__so__
FB → facebook.com/creative.1st.pm

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  4. 情報システム派生開発プロセスの工夫
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